SAPに携わる新入社員には、プログラムを書く力だけでなく、企業の業務がどのようにつながり、その中でシステムが何を支えているのかを理解することも求められます。一方、未経験者にとって、ABAPの文法、画面操作、販売・購買・会計などの業務知識を一度に身につけるのは簡単ではありません。
今回ご紹介するのは、文系出身でプログラミング経験のない新入社員が、同期3名とともに「SAP業務・ABAP開発 3ヶ月コース」を受講した事例です。1ヶ月目にABAPの基本的な考え方を学び、2ヶ月目にS/4HANA関連技術や設計・テストを経験し、3ヶ月目に主要モジュールの業務と連携を学習します。最後は4名で顧客ヒアリングから検証、発表まで取り組みました。
この研修の目標は、3ヶ月で一人前の開発者になることではありません。SAP・ABAPの全体像をつかみ、配属後に先輩の指示や業務の背景を理解しながら学び続けるための土台をつくることです。技術面に加え、質問の仕方、報告・連絡・相談、計画管理、ビジネスマナーも大切な学習テーマとなりました。 以下では受講生Aさんの視点を中心に、戸惑いや小さな発見を交えながら、3ヶ月の変化をたどります。
本文の一人称の語りや会話は、研修の流れを伝えるために再構成した表現です。学習の進み方や到達度には個人差があります。
目次
0.はじめに
本コラムの設定・シチュエーションは以下の通りです。
| 設定事項 | 内容 |
|---|---|
| 受講者 | 同じ会社の新卒社員4名(全員ABAPは未経験) |
| 研修の目的 | ABAPの基礎とSAPの基本操作、アドオン開発の流れ、モジュールについての知識、問題解決・報連相・計画管理・説明の力を身につける |
| 受講コース・期間 | SAP業務・ABAP開発3ヶ月コース・3ヶ月間 |
| 主な学習内容 | SAP概要、ABAP概要、コンポネント概要、ABAPディクショナリ、ABAPプログラミング、CDS-VIEW、OData、Fiori、アドオン開発の流れ、SD・MM・PP・FI・COの主要業務とマスタ・伝票 |
| 最終演習 | 4名で取り組む5日間のSAPモジュール演習 |
1. SAP ABA開発基礎|処理の流れを考え、質問する力を身につける
最初の1ヶ月は、SAPとABAPの概要やプログラミングの基礎、処理を順序立てて考える方法を学びます。
入社後の研修が始まるまで、私は「SAP」という言葉を聞いたことがある程度でした。文系出身でプログラミングも未経験。最初のライブ講義では、SAPが企業のさまざまな業務を支えるシステムであり、ABAPはその環境で使われるプログラミング言語だと教わりました。説明を聞けば納得できるのですが、知らない用語が次々に出てくるため、ノートに書き留めるだけでも精いっぱいでした。ライブ講義の録画を見返すことで、落ち着いて復習と整理を進めることができました。
SAP GUIを使うようになって最初に意識したのは、操作を覚えることと、処理の意味を理解することを分けて考えることです。画面上のどこを押すかは手順を見れば進められます。しかし、なぜその項目を入力するのか、プログラムがどの順番で動くのかを説明しようとすると、途端に言葉が止まってしまいます。講師から「今、何をしたい処理なのかを一文で言ってみましょう」と促され、少しずつ目的を意識するようになりました。
同期のBさんは理系出身で、キーボード操作も素早く、演習を先に進めていました。自分だけ遅れているように感じて焦りましたが、Bさんもプログラミング自体は初めてです。昼休みに練習方法を聞くと、よく使う操作を繰り返して慣れているとのこと。私も研修後に短い時間を使って入力練習をするようにしました。小さなことですが、操作で迷う時間が減ると、処理内容を考える余裕が少し増えました。
ABAPディクショナリでデータの定義を確認し、変数や条件分岐、繰り返し処理を学ぶうちに、コードが単なる英数字の並びではなく、処理の手順を表すものに見えてきました。それでも、繰り返し処理とサブルーチンが組み合わさると、今どこを実行しているのか見失います。実行結果だけを見て「合っているから大丈夫」と済ませそうになったこともありました。
ある昼休み、Cさんに「同じところを何度も読み直している」と話すと、Cさんも同じ箇所でつまずいていました。そこで二人で疑問点を整理し、講師に質問しました。講師はすぐ答えを言うのではなく、紙に処理の流れを描き、「この時点で変数の値はどうなっていますか」と一つずつ確認してくれました。途中で自分たちの思い違いに気づいたとき、ただ説明を聞くよりも記憶に残る感覚がありました。
それ以降は、質問の前に「期待した結果」「実際の結果」「試したこと」をメモするようにしました。以前は「動きません」としか言えなかったのに、少しずつ「この繰り返しの2回目で想定と異なる値になります」と具体的に伝えられるようになったのです。質問は弱点を見せる行為ではなく、原因を見つけるための行動なのだと感じました。
※当スクールの特徴:講師が重視する、つまずきの確認
この段階で重要なのは、受講生Aさんが「分からない」と感じている箇所を具体化することです。
講師は問いかけを通して受講生が確認すべき箇所を絞り込めるよう支援するとともに、自分の状況を整理して質問する方法も指導します。
1ヶ月目の終盤には、学んだ構文を使う総合演習と中間発表がありました。発表資料は2人1組で作成し、私はDさんとペアになりました。自分では理解したつもりの処理も、資料に「何を、なぜ、どの順に行うか」を書こうとすると説明が曖昧になります。最初に学んだ構文を見直す機会にもなり、復習の大切さを実感しました。
Dさんは難しい言葉を並べず、処理を身近な例に置き換えて説明するのが上手でした。私はコードの細かな説明を詰め込みがちだったので、「聞く人は最初に何を知りたいだろう」と相談しながら構成を修正しました。本番では緊張したものの、二人で役割を分担して最後まで説明できました。Bさん・Cさんの発表からも、同じ課題でも見せ方に違いがあることを学びました。
※当スクールの特徴:中間発表・報告会
神田ITスクールではABAP開発基礎単元が終わる頃を目安に、中間発表・報告会を設けています。
発表会では、受講生自身の発表を通して、プログラミングへの理解度や習熟状況を確認できます。
その後の報告会では、その時点での進捗や理解度、受講態度をもとに、今後の指導方針などについてご報告・共有いたします。
この1ヶ月で得たのは、ABAPの基本構文だけではありません。分からない箇所を切り分け、同期と相談し、相手に伝わるよう説明する姿勢が少しずつ身についてきました。まだ一人で何でも解決できるわけではありませんが、最初の頃より「どこから確認すればよいか」を考えられるようになったことが、自分にとっての前進でした。
1ヶ月目の学習を振り返ると、もう一つ変わったことがあります。それは、同期や講師に質問することへの抵抗が減ったことです。以前は自分だけが理解していないのではと考え、なかなか声をかけられませんでした。しかし、同じ課題でもつまずく場所は人によって異なります。自分が分かるところを説明し、相手が分かるところを教えてもらうことで、理解が整理されました。また、同期と相談した上で講師に質問することで、認識に相違がないかを確認してもらったり、便利なショートカットを教えてもらったりすることができました。その結果、知識を深めながら、より効率的に作業を進められるようになりました。
そして、毎日の進捗を振り返るときには、予定していた演習が終わったかだけでなく、なぜ時間がかかったのかも考えるようにしました。操作に迷ったのか、問題文の理解に時間がかかったのか、処理の考え方で止まったのか。理由を分けて考えると、翌日に何を優先して復習するかが決めやすくなりました。
2. S/4HANA基礎・応用|CDS ViewとOData・Fiori
2ヶ月目の前半は、S/4HANAに関わる仕組みとしてCDS View、OData、Fioriを学びます。
1ヶ月目はABAPの処理を追うことが中心でしたが、S/4HANAの単元ではデータの扱い方や、画面とデータがつながる仕組みも登場するようになりました。CDS View、OData、Fioriという言葉を初めて聞いたときは、それぞれ何が違うのかさえ分かりませんでした。
学習では、CDS Viewの作成にEclipseの拡張機能を使い、Fioriの演習ではVS Codeを利用しました。どちらも初めて触る開発ツールです。慣れない画面で必要なファイルを探すだけでも時間がかかり、思った場所を編集できていないこともありました。コード以前の操作でつまずくのはもどかしかったのですが、作業手順を自分用のメモにまとめることで、少しずつ落ち着いて進められるようになりました。
CDS Viewでは、どのデータをどのように取り出すのかを意識するようになりました。ODataはデータをやり取りする仕組みとして、Fioriは利用者が操作する画面との関係で理解していきました。最初は別々の技術に見えたものが、演習を重ねるうちに「データを定義し、提供し、画面から利用する」という一連の流れとしてつながり始めました。
配属予定の部署ではFioriを扱うと先輩から聞いていたため、この単元は特に集中して取り組みました。画面に情報が表示されたときはうれしかった一方、少し設定を変えただけで想定と異なる動きになることもあります。アノテーションの有無や記述内容が挙動に影響する場面を経験し、見た目が似た設定でも意味を確かめる必要があると知りました。 エラーが出ると、以前の私はすぐ講師を呼びたくなっていました。しかし、ここでは確認する場所が増えています。画面の設定なのか、データの定義なのか、サービス側の問題なのか。講師に「まずどこまで正常に動いているかを確かめましょう」と助言され、原因の候補を一つずつ減らす練習をしました。思い込みで修正を重ねるより、事実を集める方が結果的に早いと気づきました。
※当スクールの特徴:質問に至るまでの確認手段を増やす
処理やロジックが複雑になってくるにつれて、確認箇所も増えていきます。
受講生がより効率的に原因を調査・確認できるよう、質問対応の際にもデバッグ機能や図解を活用し、処理の流れを自分で追えるように指導しています。
2ヶ月目の前半で意識するようになったのは、画面に表示される結果だけで判断しないことです。たまたま期待した値が表示されても、別の条件では違う結果になるかもしれません。どのデータを参照し、どの設定が反映されているかを確かめる姿勢は、後に設計やテストを学ぶときにも役立ちました。
この段階では、高度な開発を自在に行えるようになったわけではありません。それでも、配属後に聞くであろう技術用語の数々が、自分の中で孤立した単語ではなくなってきました。現場で説明を受けたときに「それはどの部分の話だろう」と位置づけられることが、未経験者にとって大きな意味を持つと感じました。
Fioriの演習を終えたあと、先輩に研修の進み具合を伝える機会がありました。以前なら「難しいですが頑張っています」としか答えられなかったと思います。今回は、CDS ViewやODataがどのように関わるのか、自分なりの言葉で説明することができました。十分に詳しい説明ではありませんでしたが、学んだ内容を仕事と結びつけて話せたことが励みになりました。
3. ABAP応用|開発の流れ(汎用モジュール、レポートプログラム)
2ヶ月目後半は、複数のプログラムで構成された機能群を作成するアドオン開発の流れを、ドキュメント作成とプログラム作成を交えて学習していきます。
ABAP応用では以下の機能を作成します。
| 課題 | 内容 |
|---|---|
| チェック処理 | 実装機能:汎用モジュールの作成 成果物:基本設計書、詳細設計書、ソースコード、単体テスト仕様書、単体テスト結果報告書 |
| DB一括登録処理 | 実装機能:SAPサーバ上のCSVファイルを読み込み、チェック処理を実施の上、アドオンテーブルに登録する 成果物:基本設計書、詳細設計書、ソースコード、単体テスト仕様書、単体テスト結果報告書 |
| DB更新処理 | 実装機能:選択画面で入力した情報を元に、アドオンテーブルの情報を取得・更新する 成果物:基本設計書、詳細設計書、ソースコード、単体テスト仕様書、単体テスト結果報告書 |
2ヶ月目の後半は、プログラムを作るだけでなく、設計書やテストの成果物も作成しました。これまでの演習では「何を作るか」「どの構文をどのタイミングで使うか」が提示されていましたが、今度は要件を読み、どのような処理にするかを自分で整理する必要があります。開発とは、コードを書く時間だけで成り立つ仕事ではないのだと実感しました。
最初に苦労したのはフローチャートでした。使う図形が用意されていても、どの順に並べれば意図した処理になるのか判断できません。条件によって分岐した後、どこで処理を合流させるのか。異常なデータを見つけたときにどの段階で止めるのか。考えるほど抜けが見つかり、図を描いては消す作業が続きました。
設計書の処理概要も難所でした。頭の中では「CSVを読み込んで登録する」と分かっていても、その一文だけでは作業手順になりません。どのデータを確認し、問題があればどう扱い、どの条件で登録するのか。読む人が同じ処理をイメージできるように書こうとすると、曖昧な理解が次々に見つかりました。講師のヒントを受け、処理を小さな単位に分けて説明することを意識しました。
例えば、データのチェックでは「正しい場合」の流れだけ考えてしまいがちでした。しかし、入力が空欄だったらどうなるか、想定外の値が入っていたらどうするか、途中でエラーが起きたら何を表示するか、といった確認も必要です。講師に答えを求める前に、仕様書のどの記述が判断材料になるかを探すようになりました。
また、処理の中で汎用モジュールを呼び出す際も、渡すべき値が何か、どんな結果を受け取るべきかなど、改めて明記しておかないとコードにも書けないと気づきました。何気ない情報も明文化が大事だと感じました。
レポートプログラムの作成は少し久しぶりでしたが、1ヶ月目に学んだ構文を思い出しながら進められました。以前は見本を追うだけで精いっぱいだったのに、今は「この処理なら繰り返しを使う」「ここで条件を確認する」と考えてから書くことができる場面が増えています。基礎の積み重ねが応用につながることを、ようやく実感できました。
一方、テスト仕様書を作る段階では、自分の見通しの甘さが表れました。正常に登録できるケースは思いついても、異常値や入力漏れ、更新対象がない場合などの確認が抜けていました。答え合わせで他の観点を示されるたびに「確かに、それも確認しなければ」と納得します。動けば完成ではなく、想定通りに動くことを、根拠を持って確かめる必要があるのです。
特に結合テストでは、一つの機能だけを見ていても全体の動きは保証できないと学びました。前の処理で登録したデータを、後の処理で正しく取得・更新できるか。入力と出力のつながりを追うことで、設計段階から後続の処理を意識する大切さが分かってきました。
正直に言うと、この時期はうまくできないことが続いて落ち込みました。同期と比べて遅れているように思い、「自分は向いていないのでは」と考えた日もあります。週次面談でその気持ちを話すと、面談担当の方は学習の進み具合だけでなく、普段の生活や疲れについても聞いてくれました。
「今できないからこそ、研修で練習しているんですよ」という言葉が印象に残っています。確かに、入社したばかりの自分が最初から設計やテストを完璧にできるはずはありません。できなかった箇所を放置せず、次はどう取り組むかを考えることが大切なのだと、気持ちを切り替えられました。翌日からは、進捗だけでなく、その日に理解できたことも短く記録するようにしました。
※当スクールの特徴:週次面談
普段質問対応している講師とは別のスタッフが、学習の状況や日々の出来事を週次面談という形でヒアリングしています。
担当講師には直接相談しづらいことも、別のスタッフが話を聞くことで、受講生の不安や悩みを把握しています。
必要に応じて関係者と情報を共有し、受講生への適切なフォローや研修全体の品質向上につなげています。
ABAP応用を終える頃には、成果物同士のつながりが少し見えるようになりました。要件を確認し、設計し、実装し、テストで確かめる。どこか一つが曖昧だと、後の工程で困ることがあります。研修で経験したのは開発の入口ですが、その入口で仕事の進め方の重みを学べたと思います。
設計書を見直すときは、実装した本人の目線だけで読まないようにしました。数日後の自分や別の担当者が読んでも、条件や処理順を誤解しないか。説明が不足しているところには補足を加え、曖昧な言葉は具体的な条件に置き換えました。文章を整える作業にも時間はかかりましたが、コードを書く前に考えを明確にする意味が分かってきました。
一度、予定よりも設計の確認に時間がかかり、実装の開始が遅れたことがありました。そのときは残りの作業を整理し、講師へ進捗と見込みを報告しました。遅れている事実を伝えるのは気が重かったものの、早めに相談したことで、どの部分を優先して確認するべきか助言を得られました。予実管理は予定表を作るだけでなく、差が出たときに行動を変えることなのだと感じました。
※当スクールの特徴:ABAP応用で設計から考える
通常の演習では仕様を提示して実装に取り組みますが、ABAP応用では要件定義書や雛形、ヒントを手がかりに受講生自身が設計書も作成します。
ロジックを整理し、設計と実装、テストを結びつけて考える経験を重視しています。
4. SAPモジュール基礎|SAPトレンドと各モジュールの主要プロセス
3ヶ月目は、SAPの業務内容についての知識を深めるための単元を学びます。
最新開発技術について触れた上で、各モジュールの主要プロセスや主要マスタ、業務シナリオ、伝票発行手順を学びます。
3ヶ月目に入り、学習の中心はSAPの業務知識へ移りました。私にとっては、これまで覚えた技術が企業のどの仕事で使われるのかを考える期間です。ABAPのコードを読めるようになっても、利用者が何のためにその機能を使うのかが分からなければ、仕事の全体像はつかめません。
最初に、RAP、SAP BTP、Clean CoreといったSAPを取り巻く開発技術や考え方に触れました。JouleというAI関連の取り組みについても知り、今後は定型的な作業の進め方が変わっていくのかもしれないと感じました。ただ、新人の私がまず大切にすべきなのは、業務を理解し、相手の話を聞き、問題の背景を考える力です。技術が変わっても学び続けられるようになりたいと思いました。
ERPの概要を改めて学ぶと、販売、購買、生産、会計がそれぞれ独立した仕事ではなく、情報を受け渡しながらつながっていることが見えてきました。普段、店で商品を買うときには意識しませんが、企業側では必要な物を調達し、在庫や生産を管理し、売上や費用を記録する必要があります。SAPはその流れを一つの仕組みの中で扱うのだと理解できました。
SDでは販売に関わる流れ、MMでは購買や在庫に関わる流れ、PPでは生産計画や製造の流れを学びました。さらにFIで財務会計、COで管理会計の考え方に触れます。各モジュールの主要マスタ、組織構造、業務シナリオ、伝票の扱い方を学ぶうちに、最初はバラバラだった単語が少しずつつながっていきました。
特に印象に残ったのは、ある部門で行った処理が別の部門の業務に影響することです。例えば、購買の情報が在庫の管理につながり、販売の結果が会計にも関わる。画面上では別々の操作でも、企業の業務として見ると一続きです。「この伝票は次に誰が使うのだろう」と考えるようになると、単純な入力練習にも意味が生まれました。
FIの学習ではFioriのアプリケーションも紹介され、2ヶ月目に触れた技術がここで再び登場しました。画面を作る側の学習と、業務で画面を使う側の学習が結びついたようで、少しうれしくなりました。もちろん実務の複雑な設定まで理解したわけではありませんが、技術と業務を別々に考えないことの大切さを感じました。
操作演習では、登録がうまくいかず講師に質問すると、原因が単純な入力間違いだったことも何度かありました。最初は恥ずかしく感じましたが、同じ間違いを繰り返さないために、エラーメッセージを読み、入力項目や前提となるデータを見直すようにしました。配属後に先輩へ相談するときも、まず自分で確かめたことを伝えられるようになりたいからです。
トランザクションコードも数が多く、覚えるのに苦労しました。似た名称や数字が並ぶと混乱しますが、用途ごとに整理してみると、ある程度の傾向が見えてきます。ただ暗記するのではなく、「どの業務の、どの段階で使う操作か」をセットで覚えるようにしました。
各モジュールを学ぶときは、操作の直前に「この業務は何を達成するためのものか」と考えるようにしました。単に画面を開いて入力するだけなら手順を覚えればできますが、入力するデータの意味を理解していないと、似た場面で応用が利きません。業務の目的と操作を結びつけることで、覚えるべき情報にも優先順位がつきました。
同期と復習していると、同じ伝票を見ても注目する場所が違うことに気づきました。私は操作手順に目が向きがちですが、Bさんは前後のデータの変化を気にしていました。Cさんは業務上の意味を質問し、Dさんは次の処理への影響を考えていました。それぞれの見方を持ち寄ると、個人では気づけなかったつながりが見えてきます。最終演習で協力する前に、この経験ができたのは大きかったと思います。
3ヶ月目の授業を通して、私の中でSAPのイメージが変わりました。入社前は難しい業務システムという漠然とした印象でしたが、今は部門ごとの仕事とデータのつながりを支えるものとして考えられます。分からないことはまだ多くても、配属先で質問するための共通言語が少しできたように感じました。
また、この頃には、配属予定の部署で主に担当するモジュールについても連絡がありました。今回の研修で学んだ範囲だけでは対応できない部分もあると思うので、配属後も学習する習慣を大切にしていきたいと思います。
※当スクールの特徴:研修修了後も学び続けられるフォロー体制
神田ITスクールでは、研修修了後のスキルアップ・キャリアアップを支援するため、10以上のフォロー講座を無償で提供しています。
新人研修で得た基礎を土台に、配属後の業務や本人の課題に合わせて、学習を続けられることが特徴です。
例えば、SpringによるWeb開発を復習する、データベース設計やテストの理解を深める、インフラ系の知識(AWS、Linux、ネットワーク)を学ぶなど、実務で必要になった分野を選んで学習できます。
生成AI、Python、プロジェクト管理など、将来のキャリアに応じて学習領域を広げる選択肢もあります。
また、まとまった時間を確保しにくい方や、SAP認定資格などの取得を目指す方向けに、eラーニングも用意しております。
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5. SAP モジュール演習|要件定義から発表までを経験
最終演習では、ユーザーヒアリングした内容をもとに業務フローを整理し、どの業務でどのトランザクションコード(標準機能)を使っていくのかを必要なデータをチームでそろえながらまとめていきます。
ここで目指すのは、研修で学んだ基礎知識を組み合わせることと、周囲と相談・協力しながら一連の業務フローを整理・検証する経験を積むことです。
本演習を通して、顧客役へのヒアリングから設計、検証、成果発表までを経験します。
| 工程 | 取り組み・成果物 |
|---|---|
| 要件確認・設計 | 顧客役へのヒアリング、業務フローの設計・レビュー |
| 手順のテスト | データ準備と業務フロー通りに各トランザクションコードが機能するか確認 |
| 発表 | 発表資料の作成、リハーサル、上司や参加者からの質問への回答 |
いよいよ最後の5日間は、4人で取り組むSAPモジュール演習です。顧客役へのヒアリングをもとに業務フローを整理し、必要なデータを準備しながら、標準機能を使った業務の流れを検証します。これまで学んだSD・MM・PP・FI・COの知識を組み合わせるだけでなく、チームで相談し、期限内に成果をまとめることが求められます。
始まる前に4人で話し合うと、得意なモジュールがそれぞれ違っていました。自分が苦手な分野も、誰かにとっては理解しやすい分野です。全員が全部を一人で抱え込むのではなく、得意なところを活かしながら、お互いの作業を確認することにしました。
1日目:顧客との打ち合わせ・要件定義
初日は顧客役講師との打ち合わせです。これまで担当してくださった講師とは違い、初対面の相手に業務の要望を聞くので緊張しました。事前に質問を整理しましたが、実際に話し始めると、準備した順番通りには進みません。聞いた内容を理解するだけでなく、曖昧な部分をその場で確認する必要がありました。
私は議事録の作成や日程調整のメールを担当しました。Bさんは要件定義書、CさんはWBSによる作業見積もり、Dさんは大まかな業務フローを整理します。役割を分けたことで作業は進みましたが、議事録に書いた内容が要件定義書に反映されているか、担当者同士で確認する時間も必要だと分かりました。
顧客役講師はビジネスマナーにも厳しいと聞いていたため、レビューの時間を調整するメールは特に慎重に書きました。件名だけで用件が分かるか、相手に何をお願いするのか、候補時間は明確か。何度も読み直して送信したときは、コードを実行するときとは別の緊張がありました。そして、実務では毎回これほど時間をかけられないとも気づき、経験を重ねて、効率よく対応できるようになりたいと思いました。
2日目:要件定義・業務フローレビュー、データ準備
2日目は、要件定義書と業務フローを顧客役講師に確認していただくレビューです。説明の順番を決めて臨んだため、限られた時間の中でも認識合わせを進められました。ビジネスマナーについても大きな指摘はなく、ひとまず安心しました。
ただし、内容面では細かな抜け漏れや認識違いが見つかりました。自分たちには当然だと思っていた手順も、相手に確認すると違う解釈だったのです。レビュー後は要件定義書と業務フローを修正し、修正が不要な部分については他のメンバーが先行してデータ準備を進めてくれました。
この日は「レビューで指摘を受けたら失敗」ではないと学びました。早い段階で認識の違いを見つければ、後の作業で大きな手戻りを防げます。指摘された内容をそのまま直すだけでなく、同じ思い違いが他の箇所にもないか確認することを意識しました。
3日目:手順のテスト
3日目は、購買、製造、販売、財務会計、管理会計の順に進んでいく各業務の一連の流れを確認しました。業務ごとに必要なデータを用意し、操作結果をエビデンス(証跡)として残していきます。授業で個別に学んだ処理も、続けて実行すると前後関係がはっきり見えました。
確認ケースを分担していたとき、想定していた伝票番号を取り違え、別のメンバーが作成した伝票に対して後続処理を進めてしまう場面がありました。事前にケースごとに使用する伝票番号を想定し、シナリオデータの一覧を用意していたのですが、番号を読み違えて入力してしまったのです。画面操作自体はできていても、対象データが違えば結果は正しくありません。影響するデータを確認し、必要な状態に戻して再テストすることになり、大きな手戻りが発生しました。
巻き戻し作業で抜け漏れがあると、さらに問題が大きくなりかねません。そこで担当講師に状況を報告・相談し、どこまで処理を戻す必要があるのか、アドバイスをいただきました。これまでの質問対応と同じように、私たち自身で考えることを大切にしながら、解決へと導いてくれる講師の姿勢に安心しました。
焦っていると、早く操作を終えることばかり考えてしまいます。しかし、そのとき必要だったのは、実行前に入力内容が正しいかを落ち着いて確認することでした。私たちは使用する伝票番号と担当者を改めて整理し、後続作業に移る前に声をかけ合うようにしました。夕方に一通りのテストが終わり、残る再テストも少なく、予定どおりに演習を終えられそうだと見通しが立ったときは、心からほっとしました。
4日目:再テスト・発表準備
4日目は残った再テストと発表資料の作成を進めました。順調に見えたところで、クロスチェックをしていたときに「この機能のエビデンスが見当たらない」と気づきました。慌ててそのケースを担当していたメンバーに確認し、必要な画面を取り直してもらいました。今回は業務フローの終盤に近い箇所だったため対応できましたが、序盤の記録が抜けていたら、後続の確認まで影響したかもしれません。
それまで私は、テストで正しい結果が出れば十分だと思いがちでした。しかし、第三者に結果を説明するには、何を確認し、どのような結果になったのかを追える記録が必要です。チェック項目を事前に整理し、作業中にエビデンスの有無を確認する手順を設ける重要性を感じました。自分だけで作業を完結させるのではなく、他のメンバーにも確認してもらうことで、自分では見落としていた問題点に気づけるのだと身をもって体験しました。
発表資料は、テストが終わったメンバーから順に追記していきました。ただ文章を集めるだけでは内容が重複したり、説明の粒度がばらついたりします。そこで全体の構成を見直し、要件、業務フロー、確認結果、苦労した点の順で、聞き手が追いやすいように整えました。
5日目:リハーサルと最終発表
最終日の午前中はリハーサルです。持ち時間を意識して話すと、資料に書いた内容を全部読むだけでは時間が足りません。要点を絞り、画面や業務フローを指しながら説明する練習をしました。同期から「その言い方では初めて聞く人には分かりにくいかも」と指摘され、直前まで言葉を調整しました。
午後の発表会には上司の方々も参加しました。緊張しましたが、4人で取り組んだ流れを自分たちの言葉で説明できました。質問を受けたときも、すぐに答えを決めつけず、何を聞かれているかを確認してから回答しました。すべてを完璧に答えられたわけではありませんが、根拠となる資料を示しながら受け答えできたことは自信になりました。
5日間を振り返ると、技術的な知識だけでは演習を進められなかったと感じます。相手の要望を聞くこと、役割を分けること、変更点を共有すること、記録を残すこと。どれも地味に見えますが、一つ欠けるとチーム全体の作業に影響します。研修の最後にこの経験ができたことで、配属後の仕事を以前より具体的に想像できるようになりました。
最終演習で印象に残ったのは、誰かの作業が終わるまで待つのではなく、自分にできる確認を探す姿勢です。例えば、発表資料を作る人が足りないときには、ほかのメンバーが確認結果を整理して渡しました。作業が分担されていても、最終的な成果物はチーム全員のものです。担当範囲の境界だけにこだわらず、全体を見て行動することが必要だと感じました。
顧客役講師とのやり取りでは、丁寧な言葉遣いだけでなく、相手の時間を大切にすることも学びました。質問の背景を簡潔に伝え、何を確認したいかを明確にする。レビュー後は決定事項を整理し、認識に違いがないか確認する。これらは技術的な作業とは別の能力ですが、仕事を円滑に進めるうえで欠かせないと感じました。
6. 総括|研修前後で変わったこと
研修前の私は、プログラミングとは正しい構文を覚えて入力することだと思っていました。今は、何を実現したいのかを整理し、処理を組み立て、結果を確認して説明することまで含めて考えるようになりました。ABAPの基礎を学んだことに加え、順序立てて考える力が少しずつ身についたと感じます。
資料作成に対する意識も変わりました。自分が分かればそれでよいのではなく、初めて見る人が理解できる資料を目指すこと。前の工程で決めた内容が次の資料に正しく反映されているか確認すること。中間発表、設計書作成、最終発表と経験を重ねたことで、書く前に構成を考える習慣が生まれました。
報告・連絡・相談の重要性は、最終演習で特に実感しました。伝票番号の取り違えやエビデンスの不足は、誰か一人の操作だけの問題ではありません。チームで使う情報を共有し、進捗や変更を伝え合うことで防げた可能性があります。自分の作業が終わったかどうかだけでなく、次に作業する人が困らないかを考えるようになりました。
計画管理についても、チームでWBSを用いた作業見積もりと進捗確認に取り組み、予定と実績を比較しながら作業を進める経験ができました。予定通りに進まないときは、ただ急ぐのではなく、残り時間と優先順位を見直す必要があります。実務ではさらに難しい判断が求められるはずですが、少なくとも「遅れそうなら早めに共有する」という基本を意識できるようになりました。
もちろん、3ヶ月でSAPのすべてを理解できたわけではありません。各モジュールの詳細な設定や、実際のプロジェクトでの設計・開発はこれから学ぶことがたくさんあります。それでも、分からないことを整理して質問し、周囲と協力しながら学び続けるための土台はできたと思います。
※当スクールの特徴:受講生アンケートと修了報告会
研修修了時には受講生アンケートを行い、研修の良かったところや改善要望を確認しています。
受講生が苦労した点や役立った指導を振り返ることは、次の学習課題を整理する機会になります。
また、修了報告会では、報告書を用いて受講生の理解状況や受講態度を企業担当者にご報告します。
配属後のOJTや継続学習を検討する際に役立つ情報も共有しています。
7. 終わりに|3ヶ月間で得られた成長
本コラムでは、プログラミング未経験の新入社員が、SAP業務・ABAP開発の3ヶ月研修を通じて、技術と業務理解、仕事の進め方を段階的に学ぶ姿をご紹介しました。ABAPの基礎、CDS View・OData・Fiori、設計とテスト、主要モジュールの業務フローを学び、最後にチームで一連の演習に取り組む構成です。
特に重要なのは、知識を増やすだけでなく、理解を説明する機会、つまずきを自分で確認する機会、同期と協力する機会を重ねている点です。研修での小さな失敗や気づきが、配属後に学び続ける姿勢につながっていきます。
ご紹介した内容は実例をもとに再構成した一例であり、習熟度や感じ方には個人差があります。
研修前後の受講生の変化
| 観点 | 受講前 | 研修修了時の変化 |
|---|---|---|
| 技術 | SAP・ABAPの用語も操作もほぼ知らない | 基本構文や開発工程を経験し、主要モジュールと業務のつながりを説明できる土台を得た |
| 問題解決・主体性 | 分からないとすぐ答えを求めがち | 期待結果・実際の結果・確認事項を整理し、原因を探してから質問する |
| 計画管理 | 自分の作業を進めることが中心 | WBSや進捗共有を通じて期限と優先順位、手戻りを意識する |
| 説明・協働 | 理解した内容を言葉にするのが難しい | 資料作成・レビュー・発表を通じて相手に伝わる説明とチーム連携を意識する |
新人SAP ABAP研修を検討している企業の皆様へ
新人研修を選ぶ際には、扱う技術の範囲だけでなく、未経験者がつまずいたときにどう支援するか、理解度をどう確認するか、企業へ何を報告するか、配属後の学習にどうつなげるかも重要です。神田ITスクールでは、企業の育成方針や受講者の経験、人数、期間、配属後に期待する役割に合わせて研修をご案内しています。
SAP・ABAPの基礎と業務の全体像をどのように学ばせたいか、ぜひご相談ください。